願いごとは秘密に (花津美子)
画/ 花津 美子
作/ レイ・モーガン @1999 Helen Conrad
題/ Secret Dad (D-827)
ハーレクイン 別冊 2015年 vol.44
【個人的あらすじ】
裕福な名家の令嬢であるヒロイン/アドリアナ・シャーライン・チャンドラー(偽名チャーリー・スミス)は、暴行夫/ジェフから逃げるために、身分も名前も隠し、息子/ロビー(6歳)とともに辺境の山麓で暮らしていた。
チャーリーはある日、川を流されていくリュックに気付き、上流の岸に倒れていたヒーロー/デンヴァー・マケインを見つけて助け上げる。彼は、チャーリーの顔を見ては驚き、チャーリーの名前を聞いては釈然としない風で、1人で借りているという山小屋に戻ろうとした。だが結局、デンヴァーは足を痛めて歩けず、チャーリーが自宅に連れ帰って応急処置をする。
実はデンヴァーは、一目でチャーリーが偽名で本当は何者なのか気付いた。
彼の妹/ゲイルの親友として、10年以上前に彼女らの卒業式で出会った、手の届かない気高さを持つ冷たい目のチャンドラー家令嬢――今とは全く雰囲気が違うが。デンヴァーは、彼女に深入りするなと自分に言い聞かせる。
ここに来たのは、諜報員として危険な任務を続け、ボロボロになった体を休めるためなのだ。
一方のロビーは、誕生日に何が欲しいかとチャーリーに聞かれ、「パパが欲しい」という本心を言えないでいた。友達の父親の話を聞くたびに羨ましくて仕方がないのに。
そんな時、帰宅すると"理想のパパ"なデンヴァーがいて、父親ではないかと胸躍らせる。
町ではその頃、凄腕の探偵がチャーリーの行方を追っており、それを知った彼女は、デンヴァーの力を借りて逃げ出す決心をした。
【おすすめポインツ】
ハーレクインには、運命としか言えない出会いがあります。
ぶっちゃけどんな恋愛にも、多かれ少なかれ巡り合わせはあるのでしょうけれど、それこそ、あの日あの時、君に会えなかったら、ロマンスのロの字も無いような、運命だけが愛する理由な2人が――。
ヒーローは約10年前、氷の女王のヒロインに一目で恋をしたんだと思います。
でも、気高さと身分の差から近づきも告白もせず、直後に失恋してしまった。その想いを埋めるために、妹の学費という重荷が無くなっても、自分を追い込むために危険な仕事に身を投じ、ギリギリな生き方でボロボロの身体になるまで突き進んでしまったんじゃないでしょうか。ヒロインに会うのが怖くて、その親友である妹にも会えない。それも全て無自覚のままで(笑)
だから、この出会いは運命としか言えないし、この出会いがなかったらヒーローの魂は癒されなかったでしょう。
そして、こういう運命物って、一目会ったその時でロマンスが始まっているので、それぞれの魅力や心情が描かれていない時があります。ましてや、この手の事件が縦軸になった話は、恋愛そのものがなおざりになっていたり。
でも、この作品は、ヒーローとヒロインが惹かれる理由や過程がちゃんと描かれています。
ヒロインは、仕方なく逃げてはきたけれど、今を精一杯生きているし、ヒーローの支えを得て本当の勇気を手に入れます。ヒーローも、それまで抑え過ぎて潰れかけた恋心を、ちゃんと昇華させて新しい自分になります。ハーレクインの世界でさえまれに見る理想的カップル。
そして、子供ポイントが歴代トップクラスの高さです。
【もにょるポインツ】
ごめんなさい、興奮してあらすじより長いおすすめを書いてしまいました…。
もちろん、微妙なところもあります。
まず、最初にネタバレで申し訳ないんですが、ヒロイン母は、もっと早く行動を起こしてしかるべきでは? あなたのせいでどれだけヒロインが苦労したか。ヒーローと出会ったから良かったようなものの…。まあ、その報いは受けたかもしれませんけれど。
あと、あの終わり方も良かったけれど、美人さんヒロインのドレスとか結婚式とか見たかった。
【勝手に印象三昧】
ラブラブ度 ★ ★ ★ ★ ★
デンヴァーの想いは、己の人生をかけるほど強いのに、そこらのセックスしたいだけの愛じゃなかった。チャーリーとロビーの親子愛や、町中のお節介も含めて、十分に温かく満たされました。
ドキドキ度 ★ ★ ★ ★ ☆
これもほぼ満点だったけれど、もうちょっと2人の触れ合いが欲しかった。
ワクワク度 ★ ★ ★ ☆ ☆
よく考えたら、チャーリーは途中まで人妻だったんですね。そりゃエッチは無くても仕方ないわ。
ウルウル度 ★ ☆ ☆ ☆ ☆
ロビーの真剣な「パパが欲しい」お願いにキュンとしました。
もしもの離婚率 → 2%