たった一度の週末 (藤峰ゆき)
画/ 藤峰 ゆき
作/ アリソン・フレイザー @1995 Alison Fraser
題/ The Strength of Desire (I-1053)
ハーレクイン 別冊 2015年 vol.44
【個人的あらすじ】
CMソングの作曲などで暮らすヒロイン/ホープ・ガードナー(33歳)は、15年前に義理の弟だったヒーロー/ガイ・ドラクロワ(43歳)の訪問を受け、しばし呆然としていた。その前日、ガイの兄でミュージシャンの元夫/ジャックが、交通事故で亡くなったため、彼はホープの娘/マキシーンに葬儀を告げるために来たのだ。
マキシーンは、数年前にジャックに冷たくされ嫌っていたが、ガイにはあっという間に懐いてしまい、彼と一緒に葬儀に出席するという。
突然の出来事で狼狽するホープに、ガイは「君が嫌いだ」「子供欲しさにジャックを利用した」などと罵倒しながら、唇を奪った。ホープは思わず、忘れたかった記憶が蘇り戦慄する。
葬儀が終わり、ガイとは二度と会わないと思っていたホープだったが、ジャックの遺産として、彼らの母/キャロラインが住んでいたイングランド南西コーンウォールのへーロー館が、ガイとホープの共同名義にされたことを知る。ホープは、即座に権利放棄を申し出たものの、ガイが「君が相続すれば僕の分をマキシーンに」と言いだし――。
【おすすめポインツ】
不倫に嫌悪感がなくて、情熱的なくせに暗いヒーローが好きなら、弩ストライクで読めると思います。
ところで、妄想系読者としては、ヒーローよりヒーロー兄の元夫が好みです。
弟のヒーローさえいなければ、ヒロインはヒーロー兄の子供を産んで、いつかまた再会して、ヒーロー兄も少しずつ大人になる機会があったかもしれません。でも、そんなよくあるパターンに陥らず、かつ、そういうドラマチックさを秘めてるところが、この作品の深みを増しているのかもしれませんね。
【もにょるポインツ】
ヒロインはなぜ、最初の子供が亡くなったあと、きちんと離婚しなかったのでしょうか。もう終わってることは分かってたのに。
ヒーローはなぜ、彼女を外に連れ出す前に、きちんと別れさせなかったのでしょうか。弁護士なんだから、いくらでも方法は考えられたはず。
あの3人が、長い暗闇を抜けて本当の家族になったことは祝福したいけれど、どこか不安定さが残ります。まあ、あの結末は、娘のためには良かったんだろうけれど、最後のほうは流されてエッチして流されて再婚した感じで、ヒーローとヒロインは本当に幸せなのかもにょる。
それから、重箱の隅ではありますが、再会後初セックスから、父親が誰か問題を経たあと、仲直りエッチをして、プロポーズに至るまで、2人の服装が同じなんですけれど、まさか同じ日の同じ時間帯に全部済ませたんでしょうか、すげー。
さらに話は違いますが――図書館データベースでの本書の説明に、娘の父親が誰だかネタバレされてるんですが、今作に限らず、ああいうのは微妙です。
【勝手に印象三昧】
ラブラブ度 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ガイが優しかったのは、たったの一瞬とセックスの時だけ。別れの時も再会の時も、ホープを傷つけることしかしていません。彼女はよく許したと思う…。
ドキドキ度 ★ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャックの仕打ちからホープを助けるつもりなら、ガイは13年も待つべきじゃなかった。それでも、マキシーンの健気さに★1つ。
ワクワク度 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャックが死んだ時点でラストまで分かるパターン。むしろ、安定感は抜群です。
ウルウル度 ★ ★ ★ ★ ☆
可愛くて純粋なホープに、一目惚れしてしまったジャックだが、彼女はまだ幼くて見守ることしかできなかった。でも、ホープの父が病に倒れ、やっと彼女を支えることで手に入れる。
そうして、一途に愛してくれる理想の若妻を手に入れたのに、弟ガイに引き合わせた途端、2人の間に走る火花に気付いてしまったジャック。
ジャックは、昔から優秀な弟にある種の対抗心と引け目があって、様々なものから逃げていた。だが、ホープをガイに取られるのではないかとの恐怖から、ジャックはがむしゃらに彼女を求める。その結果が最初の妊娠。大人になりきれないジャックは、ホープからも逃げようとしてしまう――結果的にガイの元へホープが行くことになっても。
でも、子供は生まれることはなかった。ジャックはもう一度、ホープを自分のものにしようとして、さらに彼女を傷つける。
ジャックは、罪悪感から逃れるため、他の女性とも手当たり次第に付き合うが、さらに自己嫌悪でホープに合わせる顔が無くなっていった。それでも、ホープを諦めきれないジャックは、彼女のところに来てしまい、ガイとホープの関係にも気づく。
いやまだ…今なら、もう一度やり直せるかもしれない。
しかし、また妊娠したというホープに、ジャックは再び自信を無くして逃げ出そうと考えた。子供なんかいらない。自分の子供じゃない。
そのまま十数年が過ぎ、年齢の衰えとともに体調の悪さを思い知ったジャックは、やっと自分の娘に会おうと決心するが、衝撃的なことに――娘マキシーンが自分ではなく弟ガイに似ていることに気付く。他の誰でもなく幼い頃から一緒に育った兄弟だからこそ分かる真実。けれども、ホープが隠しているのなら、それでもいいのではないか…。
だが、とうとうホープは告げた。「あなたの子じゃないわ」と。
やがて、余命宣告されたジャックは、最後に何をするべきか決心する――自分が引き裂いた2人と娘を――愛した家族を、もう一度結びつけようと。
という妄想をして号泣しちゃったので★満点だけれど、やっぱりジャックのクズ男っぷりに★マイナス1。とか、あらすじより長い感想を書く自分がキモい(笑)
もしもの離婚率 → 90%